「初動の大切さ」を改めて実感する
文/早川三雄(小学館/東日本大震災対策特別委員長)
2012.04.05
東日本大震災発生から1年を経過しましたが、被災地復興、瓦礫の処理、福島第一原発事故などなど、いまだに課題は山積みです。それは雑誌業界にとっても変わりはありません。
このスペシャルレポートでは、『雑誌協会から見た東日本大震災』として、雑誌協会の中で震災対策などに関わった方々に特別寄稿をいただきます。第一回目は、震災発生直後より震災対策特別委員長を務めた早川三雄委員長に、この1年間の活動を振り返っていただきました。
東日本大震災から1年。福島第一原発の民間事故調査報告でも明らかになったように、危機対応は初動が鍵を握っているとつくづく思います。
2011年3月11日に大震災が発生。出版業界も大混乱に陥り、各現場はそれぞれ休日返上で対応にあたりました。休み明けの3月15日、雑誌協会は取次協会と連携し東日本巨大地震緊急対策連絡会を招集、販売委員会、生産環境委員会を中心に約70人が雑誌協会大会議室に集まり、物流、用紙、印刷、製本等のこの時点での状況把握の報告、そして今後の見通し、対策について協議を重ねました。
会場は最初から緊迫した雰囲気に包まれていました。この時点では、誰も被災地がどうなっているのか、書店様の状況は、無事に雑誌が出せるのか・・・などといった情報がどこにもなかったのですから、当然のことです。
連絡会はまず、広岡生産環境委副委員長の紙、印刷、製本の深刻な被災状況の説明に続き、取次協会・柏木輸送研究委員長が①「隔日配送」の実施、②被災3県の配送中止、③相次ぐ搬入事故から、書籍・雑誌の送品伝票(発売日)の決定を搬入時点基準とする方針を説明、さらに谷川雑誌研究委員長が計画停電、ままならぬ人員確保による困難な作業状況の説明があり緊張はさらに高まっていきました。
この時点で、「それぞれの委員会が対策に当たるのではなく、委員会横断的な特別委員会を緊急で設置し、すべての情報を共有すべきだ」という話になりましたため、翌16日の理事会で決定し、販売、生産環境、広告、宣伝、デジタルの各委員会の代表で構成する大震災対策特別委員会の設置を発足させました。いま思えば、他の業界と比較してもスピーディーな決定だったのではないかと思います。
- 委員長
- 早川三雄 (小学館・雑誌発売日励行本部委員長)
- 副委員長
- 横沢 隆 (角川GP・雑誌基準運営委員長)
- 藤原 卓 (新潮社・物流委員長)
- 山本喜由 (文藝春秋・物流副委員長)
- 大久保徹也 (集英社・デジタルコンテンツ推進委員長)
- 川端下 誠 (講談社・発売日小委員会委員長)
- 戸塚源久 (双葉社・コミックムック特別委員会委員長)
- 広岡克己 (小学館・生産環境委員会副委員長)
- 片桐隆雄 (マガジンハウス・広告委員会副委員長)
- 宮本光広 (学研マーケティング・宣伝委員会副委員長)
委員会は連日のように開催されました。取次協会はもちろん、出版対策本部、書籍協会、印刷工業界、製紙連合会、日書連などの各方面と連絡を取りながら、
1. 雑誌、新聞、HPなどを使って読者や書店への発売日遅延のお知らせ、
2. 広告主への事態報告、
3. 搬入管理の徹底、
4. 取次協会との配送計画連絡
などの復旧対策に取り組んでまいりました。会議終了後には、すぐに事務局から加盟各社に一斉メールを送り、会議の結果報告と施策へのご協力をお願いしてきました。
その後の委員会の詳細な活動につきましては、こちらの年表「東日本大震災後の出版界の対応」(PDF)をご覧ください。連日の動きがより鮮明にわかるかと思います。
私たち日本雑誌協会としては、「読者が待っている=定期雑誌の発売日確保」を最優先課題として取り組んでまいりました。とはいえ、何しろ初めての事態の連続だっただけに、加盟各社の皆さまには混乱を生じ、ご迷惑をおかけした面も多々あったかと思います。
しかしながら、地震発生直後に早々に委員会を立ち上げ、関係各方面との協調態勢を整えたことが、その後、計画停電、節電対策等の深刻なダメージが広がる中でも、大きな混乱を招かずに進められてきた要因だと思っております。まさに「初動の大切さ」です。また委員会のチームワークと会員各社の皆さまのご協力に心より感謝を申し上げます。
我々は今度の震災で多くのことを学びました。永年に渡る課題も浮き彫りになって来ています。対策委員会はこれからも「輸配送のバックアップ体制」「業量の平準化」「輸配送の拠点の分散」等課題の改善に取り組んでまいります。皆さま方のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。